「宇宙エレベーター」をご存知でしょうか。

エレベーターは日常生活の中ではビルやマンションを移動する時に利用するものですが、はるか宇宙まで続く宇宙エレベーターというものが研究開発されています。
別名軌道エレベーターとも呼ばれるこの装置は、「宇宙ロケットの父」と呼ばれたロシアの科学者コンスタンチン・ツィオルコフスキーによって1985年に提唱されました。

現在、宇宙へ人や物を運びたい場合は、地球の重力を振り切るほどの出力を持ったロケットを発射しなければならず、わずかな量を送り込むのに莫大な予算が必要となっています。
そこで、地上から衛星軌道まで届く軌道エレベーターを設置しておけば、ロケットがなくても宇宙まで行くことが出来るというものです。

宇宙エレベーターの仕組み

普通のエレベーターのようにエレベーターのかごを上下させる建物を建造するのは不可能なので、地球の重力と人工衛星の遠心力が釣り合う静止軌道で、地上との位置関係が全く同じ状態にある静止衛星を用意します。
その静止衛星から地上に丈夫な素材でできた紐を地上まで伸ばしていきます。
しかし、紐を垂らしてしまうと、重力を遠心力の釣り合いが取れなくなるので、宇宙の側にも同じように紐を伸ばしていきます。
そして地上に紐が到達したら、紐を伝ってエレベーターを上下させるというものです。

宇宙エレベーターが実現すれば、燃料を使って推力を得るのではなく、紐を伝うためのモーターを動かす動力によって上昇していくので、コストが大幅に削減できます。
人工衛星を打ち上げるときも、かごに乗せて静止軌道まで上げて、そこから宇宙に飛ばせばかなりのコストダウンとなります。

もちろん、静止衛星を打ち上げて紐をつなげるためには、相当のコストがかかりますし、エレベータを上げて宇宙に滞在するとなれば、人や物が留まるための宇宙ステーションも建造しなければいけません。
とはいえ、一度設備が整ってしまえば、何度も繰り返し使っていくことで、費用を回収することができますし、複数の宇宙ステーション同士で荷物や人の行き来ができれば、地上で運ぶよりも低コストになるかもしれず、そこに新たなビジネスチャンスも生まれて経済効果も期待できます。
このようにコストの問題は、工夫次第で解決する方法があるのです。

長らくSF小説などで登場してきた宇宙エレベーターですが、今になって様々な研究機関や企業が実現に向けて動いている理由のひとつは、カーボンナノチューブができたことです。
というのも静止軌道上から地上まで伸びる紐は、普通の素材では、かごを上下させるときの負荷やジェット気流、雷といった自然現象に耐えることが出来ません。
固くて丈夫な素材では、逆に力のかかり具合で折れてしまいかねません。
理想的なのは丈夫である程度曲がったり引っ張ったりしても切れることのない素材です。

そのような素材は、1991年にカーボンナノチューブが登場するまでなかったので、空想上の乗り物として扱われてきました。
ところがいざカーボンナノチューブが発見されたら、金属よりも強度がありながら、柔軟性が熱にも強い、というように驚くべき性能が明らかになり、これは宇宙エレベーターの材料として最適だと注目されているのです。

宇宙エレベーターの現状

では、実際に人や物を運べるだけの成果が出来ているのか、というと、残念ながらまだその段階ではありません。
というのも、宇宙エレベーターの可能性があると動いているのは、ほんの数か国だからです。

それでも、現在は、各国の研究者たちが、ラジコンを使ってどこまで高いところまで登れるかという大会も催されているのですが、その成績はどんどんと伸びているので、着実に技術は向上しているといえます。

他に解決しなければいけない課題としては、万が一紐が切れた時にかごに乗っている人や物を守ることが出来るのか、他の人工衛星がぶつかる心配はないのか、といった安全上の問題もあります。
また、飛行機や鉄道と同じく、テロの脅威に対しても警戒しなければいけません。

静止軌道までリニア新幹線と同じ速さの時速500kmで昇ったとしても72時間は必要となります。
人を運ぶとなれば、それだけの時間を過ごすことが出来るだけの設備も必要になってきます。

さらに、運用にあたっては多くの利権が関わってきますから、各国で争うことも想定されます。
地球の動きを考慮すれば、建設できるのは赤道上だけということになるので、無制限に出来るわけではないので、利権争いは更に厳しくなります。
そういった問題を解決しない限り、日常的な乗り物となることは難しいでしょう。
今、世界の各地で民族や宗教の違いから争いが起こっており、国家の垣根を超えて宇宙まで軌道エレベーターを伸ばすというのは、かなり難しいといえます。

日本では、大林組が2050年までに宇宙エレベーターを完成させるということで、プロジェクトチームが動いています。
夢がある話ですが、本当にそれが実現できるのか、という疑問は持たざるをえないでしょう。